患者様からよく相談を受ける症状や疾患には次のようなものがあります。頻度の多いものからいくつかご紹介していきましょう。
患者様からよく相談を受ける症状や疾患には次のようなものがあります。頻度の多いものからいくつかご紹介していきましょう。
逆流性食道炎とは、強い酸性の胃液や、胃の食物が食道に逆流して、食道が炎症を起こし、びらんや潰瘍などを生じる病気です。このため胸やけや胸痛などさまざまな症状が生じます。もともと日本人には少ない病気でしたが、最近、患者さんがとても増えています。逆流性食道炎では胸やけのほかに、呑酸、胸痛、咳(しつこい喘息様の症状もこともあります)、咽頭違和感、嗄声、不眠などさまざまな症状がみられます。
逆に、あまり症状を感じない患者さんもいます。
診断は内視鏡をすることで、確認できますし、治療は大変効果的な内服薬もあります。ただ、治療をやめてしまうと、再発を繰り返すことが少なくありません。逆流性食道炎をしっかりと治療することは、バレット食道(食道粘膜が胃粘膜に置き換わるもの)、そこから発生するバレット腺がんなどの予防につながると考えられています。
食道がんは、初期には自覚症状がないことがほとんどです。がんが進行するにつれて、飲食時の胸の違和感、飲食物がつかえる感じ、体重減少、胸や背中の痛み、咳、嗄声などの症状が出ます。誘因として、過度の飲酒歴や喫煙が指摘されています。
少量の飲酒ですぐに顔が赤くなる人が、食道がんになる危険性は通常の人の何十倍にもなるといわれています。
食道がんの治療には、粘膜にとどまるがんでは、内視鏡治療が推奨されています。
そのほか外科手術、放射線治療、化学療法があります。単独または組み合わせた治療を行います。
食道アカラシアはすんなりと食物が胃に入らず、食道内に停滞してしまう病気です。食物が食道にたまるため、食事のつまり感や、嘔吐することもあります。発症年齢は30歳代から50歳代が多いとされています。頻度は多くないですが、食道癌の発生頻度が高いことも知られています。
カンジダ食道炎とは食道の感染症のなかで最も多い病気で、栄養状態の悪化、免疫抑制剤の使用中、免疫機能が低下する病気にかかっている場合などに発症しやすくなります。喘息で吸入薬(ステロイド吸入薬)を使用している場合にも、認められることがあります。
無症状の場合も多くありますが、嚥下困難、胸痛、嘔吐などを認めることもあります。程度の軽いものであれば経過観察が多いですが、免疫機能が低下している場合や症状がある場合には、抗真菌薬による治療が行われます。
胃・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が欠けてしまうことで起こる病気です。
主な原因は、ピロリ菌や痛み止めなどの薬(非ステロイド性抗炎症薬)です。ストレスなどで起こることもあります。症状は、腹痛(みぞおちの痛み)や胸やけ、膨満感などがあります。
胃潰瘍は、食事中から食後に、十二指腸潰瘍は、空腹時や夜間に痛むことが多いといわれています。
進行した場合には、出血や穿孔を伴うことがあります。胃・十二指腸潰瘍の下血の場合、タール便と言って、黒色便が出ることが多いです。出血をきたした場合でも痛みが無いこともあります。
ので、症状が無いからといって心配ないとは言えません。
治療は内服薬による治療です。通常6~8週間で治癒しますが、食事上の注意や、喫煙やアルコールを控えるなど生活改善も行います。
ピロリ菌に感染していると、再発を繰り返すこと、がんの原因になることなどが知られていますので除菌治療を受けることをお勧めします。
また、他の病気のために投与される非ステロイド性抗炎症薬が原因の場合には主治医とよく相談されることをお勧めします。
胃がんは、胃粘膜の細胞が、何らかの原因でがん細胞になって生じます。胃がんの原因として、喫煙やピロリ菌の持続感染、塩分の多い食品の過剰摂取や、野菜、果物の摂取不足が指摘されています。症状は、早期の場合にはほとんどなく、検診などで見つかることがほとんどです。
進行していても無症状の場合があります。代表的な症状として、胃痛、胸やけ、食欲不振などがありますが、これらは胃がん特有の症状ではなく、胃炎や胃潰瘍の場合でも見られる症状です。
検査をしなければ確定診断はできませんので、薬をのんで様子をみるよりも、まずは検査を受けることが重要です。胃炎や胃潰瘍の場合でも、内視鏡で偶然に、早期胃がんが発見されることもあります。食事が引っかかる、体重減少などの症状は、進行胃がんの可能性もあるため、早めに検査する必要があります。
治療には、粘膜にとどまるがんでは、内視鏡治療が推奨されています。そのほか外科手術、化学療法、放射線治療などがあります。
機能性ディスペプシアとは、内視鏡などで、症状の原因となる明らかな病気がないにもかかわらず、慢性的に腹痛や胃もたれなど腹部症状を呈する疾患です。原因として、胃・十二指腸の運動の障害、知覚過敏、心理的要因、胃酸、ピロリ感染、遺伝的要因、サルモネラ感染など感染性胃腸炎の既往、アルコール、喫煙、不眠などの生活習慣の乱れ、胃の形態などが原因として知られています。
治療として消化管運動機能改善薬と酸分泌抑制薬を使いますが、場合によっては抗不安薬や抗うつ薬、漢方薬が使われることがあります。ピロリ菌感染がある場合には、除菌治療を受けられることをお勧めします。また生活習慣や食習慣の改善も必要です。
ただし再発も多いことが知られています。
また、FDの患者さんのは過敏性腸症候群や慢性便秘などが合併するといわれています。