大腸の病気について

大腸ポリープ

自覚症状の無い場合がほとんどです。大腸の粘膜の一部が隆起してできたものを大腸ポリープといいます。
大腸ポリープはその組織により腫瘍性のポリープと非腫瘍性のものに分けられ、大腸がんになる可能性があるものは腫瘍性ポリープである「腺腫」です。
多くの場合、検診などで、便に血が混じっているかを調べることで、2日間の便のうち1日でも陽性と判定されれば、一般に内視鏡による精密検査を行います。
便潜血検査により、進行癌の90%以上、早期癌の約50%、腺腫などのポリープの約30%を見つけることができるといわれています。
また便潜血陽性以外にも、家族歴、既往歴で大腸ポリープや大腸がんと診断された方がいる場合は、一度、早めに検査を受けていただいたほうがよいでしょう。

早期大腸がん

自覚症状の無い場合がほとんどです。がんの浸潤の深さ(深達度)が粘膜と粘膜下層にとどまるものを早期がんといいます。
便潜血検査により、早期がんの約50%を見つけることができるといわれています。内視鏡的に、安全かつ完全に病変を切除できると考えられる早期がんに対しては、まず内視鏡治療が考慮されます。粘膜下層に浸潤する癌にはおよそ10%前後の確率でリンパ節転移が起こりますので、リンパ節郭清を伴う腸切除を追加するかどうかを検討します。

進行大腸がん

進行がんだからといって、特有の症状はありませんが、血便、便が細くなる、残便感、腹痛、便秘と下痢を繰り返すなど、がんにより腸が狭くなり便通が悪くなることによる症状や、がんからの出血による症状が現れます。
進行がんといっても、深達度や転移の有無により、その程度はまちまちですが、大腸癌の場合、たとえ進行癌であっても、根治切除できる可能性も十分にあります。そのほか抗がん剤による化学療法や放射線による治療もあります。

感染性腸炎

病原体が腸管に感染して発症するものであり、病原体には細菌、ウイルス、寄生虫などがあリます。夏には細菌性腸炎が、冬から春にかけてはウイルス性腸炎が多く発生するといわれています。
症状としては下痢、発熱、腹痛、悪心、嘔吐などがみられることが多いですが、中には下痢を認めない例もあります。

虚血性腸炎

大腸の血管の虚血によりびらん、潰瘍、壊死などが起る病気で、急性に発症する下腹部痛、鮮血便や鮮血を混じた下痢が特徴的です。原因としては、高血圧や糖尿病、高脂血症などによる動脈硬化性の変化と便秘や腸蠕動亢進などの機械的要因が関与しているとされています。多くは点滴などの保存的療法で軽快しますが、中には慢性型に移行するものがあり、狭窄症状が高度なものには腸切除術が必要になる場合もあります。

クローン病

大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患といいます。
クローン病は、炎症性腸疾患のひとつで、口腔から肛門にいたるまでの全消化管に炎症や潰瘍が起こる病気です。特に小腸末端部が好発部位です。症状として腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じます。10歳代~20歳代の若年者に好発します。男性と女性の比は、約2:1と男性に多くみられます。
治療としては、食事療法を含め、内科治療が主体となることが多いのです。しかし腸閉塞や穿孔、膿瘍などの合併症には外科治療も必要となります。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性腸疾患です。症状としては、下血などを伴ったりする下痢と腹痛です。若い人に多いですが、若年者から高齢者まで発症します。治療としては、内科治療が主体となることが多いのです。しかし穿孔や、内科治療が無効な場合には外科治療も必要となります。

大腸憩室症

憩室による病気として、憩室出血と憩室炎があります。
憩室の多くは大腸の固有筋層が欠損した部位から粘膜および粘膜下層が漿膜側に突出した状態で、内視鏡で見ると凹みとして観察されます(仮性憩室)。
原因として食物繊維の摂取低下や便秘等による内圧亢進が関与しているとされています。高齢になるほど増加する傾向があります。
日本ではその頻度は20%を超えるくらいといわれています。従来右側結腸の頻度が高く70%を占めていましたが、近年S状結腸憩室が増加してきています。

憩室出血

腹痛を伴うことなく、突然に出血を認めた場合には、憩室出血が疑われます。憩室からの出血は、どの憩室から出血しているかを同定することは困難な場合が多く、さらに憩室出血の8割近くは自然止血するため、実際に内視鏡で観察した際には既に止血している場合も少なくありません。しかし、一方で約4割が再出血するといわれており、輸血を必要とする場合もあります。とくに、抗血栓薬を服用中の場合には注意が必要です。

憩室炎

憩室に便が詰まったりすることをきっかけとして細菌感染が起こり発症します。一番よくみられる症状は腹痛です。また発熱がみられることもあります。腹痛の場所は、憩室炎の起こる場所によって違い、右下腹部痛の場合には急性虫垂炎と鑑別する必要があります。
憩室炎では、抗菌薬を使用した治療が中心となります。炎症が軽いものであれば、外来通院で抗菌薬を内服して治療することも可能ですが、その際には、症状が悪くならないか慎重に経過観察しながら外来再診で確認します。憩室炎が悪化してしまうと膿瘍をつくったり、腹膜炎になることがあります。このような場合には外科的な手術が必要です。憩室炎は、再発する可能性があります。再発を予防するには、食物繊維を十分に摂って便秘をしないようにすることなどがいわれていますが、その効果は証明されているわけではありません。

便秘

便秘とは、便を十分にかつ快適に出し切れない状態です。便秘が続くとおなかが張って苦しくなったり、吐き気や食欲低下につながったりすることもあるため、早めに対処することが大切です。便秘の有症率は平成28年の調査によれば、自覚症状のある人は男性2.5%、女性4.6%で、また実際の有病率はさらに高いといわれています。
最近は新しい治療薬も発売されており、治療の選択肢も増えてきています。

過敏性腸症候群

腹痛やお腹の調子がわるく、便秘や下痢などの異常が数ヵ月以上続く状態のときに最も考えられる病気です。大腸に腫瘍や炎症などの病気がないことが前提になります。
約10%程度の人々にこの病気であるといわれていますが、女性に多く、年齢とともに減ってくるといわれています。腹痛、便秘・下痢、不安などの症状のために日常生活に支障をきたすことが少なくありません。

痔疾患

痔とは、痔核、痔瘻、裂孔の3つを含む病気で、最も多いのは痔核であり、約半数を占めます。次に多いのは女性の裂肛であり、男性は痔瘻が多いという特徴があります。痔核・痔瘻・裂肛といったいわゆる痔はどれも良性の病気ですが、長い経過で慢性の炎症を繰り返すことで、がんとの関連性をいわれています。